芥川賞といえば純文学の新人に与えられる賞で、
誰も知らない人はいない!と言っても
間違いないほど有名ですよね。
その賞の由来ともなっている文豪
芥川龍之介の作品を読んでみたい!
と芥川賞の発表があるたびに
思うんですよ。
ですがなにせ古い作品なので
文体がちょっと難しい言い回しで
長編は挫折しそう。
読んだことがあると言っても
学生の頃の国語の授業で「羅生門」を
読んだっきりです。
短編も幾つかあるということは
知っていたので、
両親に読みやすい芥川龍之介著の
短編はないのか聞いてみました。
「芥川龍之介の作品だと
鼻とかなら長くないから
普段読書しない人でも読めるよ」
「鼻」というインパクトのある題名に
惹かれたので芥川龍之介の作品を集めた
短編集を買って早速読んでみることにしました。
鼻のあらすじ
まずは簡単に芥川龍之介の鼻について
あらすじを簡単にまとめていきたいと思います。
池の尾という所に禅智内供という
50歳を超えた僧侶がいました。
その僧侶は内道場供奉という僧侶の
中でも偉い職についています。
そんな高名な僧侶にも一つ大きな
悩みがあるのです。
それは上唇から顎の下までドンッと
伸びる大きな鼻。
池の尾ではそれを知らぬものはいない
というほど特徴のある鼻でした。
鼻が邪魔で自分では食事がままならず
弟子に鼻を持っていてもらうのですが、
弟子の手が震えて粥の中に鼻を落として
しまうほど。
また周囲からもその鼻のせいで、
散々なことを言われてしまいます。
- あんな鼻では妻になろうという
女もでてこない - あの鼻だから出家したんじゃないか?
そんな周囲から噂され面白がられる現状に
いよいよ耐えられなくなってしまい、
内供は鼻を小さくする決心をしました。
そこで実践したのは鼻を茹でで人に踏ませるという
とんでもない方法。
背に腹はかえられず実践してみると、
あれだけ大きかった鼻が
短くなっているではないですか!
内供は晴れ晴れとした気持ちで
しばらく日々を過ごします。
しかしながらどうしたことかそれでも
まだ鼻を面白がる連中がいるのです。
なぜ何の変哲もないこの鼻を依然として
笑うのかということを内供は
悩み考え始めました。
そうして悩んでいるとどうにも
鼻もむず痒く夜中になっても
寝付けません。
鼻を短くしたから病でも起こしたのだ!
と気に病みつつ眠ります。
翌朝のこと、内供が鼻に手をやると
どうしてか鼻はもとの大きさに
戻っていました。
そうした時、
鼻が短くなった時と同様な晴れ晴れとした
心持ちが内供に心に帰ってくるのです。
「こうなれば、もう誰もわらうものは
ないにちがいない」
長い鼻を明け方の秋風にぶらつかせながら、
内供は心の中でそう自分に囁きました。
鼻のあらすじは以上です。
鼻の感想
読んでみるととても分かりやすく
現在の事柄にあてはまるところがあります。
文中でも綴られていることなのですが、
人間には二つの矛盾した感情があります。
- 他人の不幸に同情する感情。
- 他人が幸福になると物足りなくなり
不幸になればよいと思う感情。
これを現代風に分かりやすくすると
恋人がいないと嘆く友人の話を聞いて
同情していたけれど、
いざ友人に恋人ができてのろけ話ばかり
聞かされると別れてしまえばいいのに
と思ってしまう。
というような事でしょうか。
そう言われてみると
私自身も人の不幸に同情しつつも
その不幸を多少なり面白がっている事が
少なからずあった気がします。
また内供が自分の鼻を認めたラストシーンも印象的。
最初と状況は何一つと言っていいほど
変わってはいません。
しかし内供の心内が晴れ晴れとしているのは、
一通り悩みそして納得できる過程を踏むことが
できたからではないでしょうか。
そこには現代社会でも通じる個々それぞれの
コンプレックスに対する向き合い方が
作品を通して諭されているように思えます。
そういったことをまとめてみると、
この鼻という芥川龍之介著の短編は当事者ではない
傍観者が利己的に話題に上げ
楽しむ理不尽さと、
コンプレックスを乗り越える過程を
描いた作品であると感じます。
芥川龍之介がこの作品で表したことは
現代でも共感しやすい内容ではないでしょうか。
自分自身の感想もある程度まとまったところで、
友達にも芥川龍之介の鼻を勧めてみて
感想を聞いてみることにしました。
しばらく経って感想を聞いてみると
「コンプレックスは自分が納得しないと
解決しないものだと感じた」
とのことでした。
容姿にコンプレックスがある人は
いくら他人が「そこが魅力」や「別に普通だと思う」
と言っても、
整形したりダイエットしたりして
なんとか直そうとする。
そういう具体的な例を思い浮かべて、
友達はこの芥川龍之介の作品に
共感したそうです。
また鼻を読んだことのある別の友人からも
感想を聞いてみました。
「鼻を粥に落としたことを面白がるのもわかる、
自分の目の前で実際に起きたら笑ってしまう」
と率直な感想です。
確かに私も読んでいてクスッと笑って
しまっていました。
少し笑える部分があるところも
芥川龍之介作品の中で「鼻」が
読みやすいといえる点の1つ
かもしれませんね。
まとめ
鼻は数ある芥川龍之介作品の中でも
さくっと読み易い物語でした。
芥川龍之介作品をこれから読んでいきたい
という方の入り口におすすめの作品です。
ゆっくり30分ほどかけて読みましたが、
内容が深く考えさせられるため
読み終わった時は長編を読んだような
心持ちになります。
またこの芥川龍之介の鼻という作品は
実際に友達などの感想を聞いていると、
人によって感想が様々に分かれる
作品だという印象を受けました。
ですので読書感想文を書く際にも
よい題材になるのではないでしょうか。