蜘蛛ってやっぱりあまり好きではありません。じめじめしたところにいるせいか何だか陰気な感じ。ハロウィンの飾りにも登場するところを見ると、やっぱりお化けを連想させる生き物なのでしょう。
ところが「朝蜘蛛は縁起がいい」などと申します。実は益虫だとも聞きます。一体どんなことからそういう言われるようになったのでしょう。
調べてみました。
朝の蜘蛛にまつわる言い伝え
朝蜘蛛は福を持ってくる
普段はちょっぴり気持ちの悪い蜘蛛ですが、「朝出る蜘蛛は福を持ってくる」と言います。「天気に恵まれる日に巣を張る」という蜘蛛の性質から、そういわれるようになったようです。
朝蜘蛛が巣を張っている姿を見たら、その日は良い天気である可能性が高いといえます。晴天を知らせることから、福をもたらすと考えられたわけですね。
客人がくる前触れ
これについては色々な説がありますが、印象的なのは日本書記に登場する衣通姫(そとおりひめ)の和歌です。衣通姫(そとおりひめ)は、その美くしさが衣を通して光り輝いて見えた、というほどの美女。
「わが背子が来べき宵なりささがねの蜘蛛の行い今宵著しも」
この歌は、姫がある朝蜘蛛が巣を掛けたのを見て、天皇のお渡りがあることを予感して詠まれたというもの。
この故事から、朝蜘蛛が待ち人が来ることを知らせるとものとして考えられるようになったようです。
陰陽論に基づいた理由
人々が朝蜘蛛に良い印象を抱くのは、陰陽論に基づいた理由があるようです。全てのものが『陰』と『陽』に分けられると考える陰陽論では、双方のバランスが取れた状態が理想的であると考えられています。
陰陽論では、朝は『陽』、夜は『陰』と考えられています。蜘蛛は『陰』と考えられている生き物なので、蜘蛛が朝現れることは陰陽のバランスが取れた状態といえます。
朝蜘蛛が縁起が良いとされる一方で、夜の蜘蛛はあまり歓迎されない存在として扱われることが多いようです。夜と蜘蛛が揃うと陰の力が強くなってバランスが取れなくなるからです。
朝蜘蛛は福をもたらすと考えられるのに対して、「夜の蜘蛛は盗人が来る前触れ」などと言われます。グロテスクな見た目もあり、暗闇に潜んでいる姿はやはり不気味な印象を与えてしまうようです。
さいごに
実際には蜘蛛は益虫として考えられています。現れる時間にかかわらず、ダニや蚊などの害虫を駆除してくれるからです。
また、ネイティブアメリカンには蜘蛛の巣をモチーフにした『ドリームキャッチャー』というお守りがあるそうです。悪いものはとおり抜け、良いものを絡め取るとする魔よけのお守りです。
昔から実は大切に考えられている生き物かもしれませんね。蜘蛛を見つけたら退治せず自由にさせてあげることが良いでしょう。