先日の話ですが、中学3年生の息子に宿題の問題に出た小林一茶の俳句を見せられました。これ、何言ってるのか意味解る?と。
「蟻の道雲の峰よりつづきけん」
まあ、何となくはわかります。蟻の列と雲の峰、つづくのキーワードから見て、季語などはそれほど知りませんが、この俳句から情景のイメージはできます。
今、目の前にあるこの蟻の行列は、もくもくと峰のようになった雲(入道雲)まで続いているのだろうか、という解釈なのですが、息子は全く意味が読み取れない!と憤慨していました。
前々から国語が苦手、読解力には一抹の不安のある息子ですが、読解力って他の教科にも必要な要素ですよね。文章から作者の意図や心情情景を正確に読み取る力は、勉強以外にも必要なものだと私は思っています。
さて、うちの息子のことはさておき、近年の調査では日本人の読解力の低下が不安視されているようです。読解力の低下の原因とは一体何なんでしょう?
今年は息子の高校受験もあります。読解力アップに役立てるため、この機会に調べてみました。
読解力の低下の実態とは?
2019年12月に、2018年に実施したPISA(国際学習到達度調査)の結果が発表されました。
読解力に関しては、2015年におこなわれたPISAでは順位は8位、2018年の場合は15位という結果を受けて、日本の読解力が前回に比べて低下していることが話題となりました。
PISAとは?
PISAとは、OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に行っている学習到達度を見る国際的な試験で、3年ごとに15歳(日本では高校1年生)を対象に実施しています。
内容は、以下の3分野になります。
- 読解力
- 数学的リテラシー
- 科学的リテラシー
過去3回の試験の結果での日本の順位は、以下のようになっています。
年度 | 科学的リテラシー | 数学的リテラシー | 読解力 |
2012 | 4位 | 7位 | 4位 |
2015 | 2位 | 5位 | 8位 |
2018 | 5位 | 6位 | 15位 |
この結果を受けて、文科省の国立教育政策研究所は、他者に自分の意見を伝える能力について課題があると見ています。
読解力とは何なのか?
読解力とは、この世に生きるためにどんな力としての意味があるのでしょうか?読解力には3つの相(すがた)があるとされています。
- 文章から人物の心情を読み取るなど、日本の国語教育の伝統的な読解力
- 自分にとって必要だと思う情報を抜き出し、自分の知識や経験と結びつけまとめたり、話し合ったりする活動全般を指すPISA型読解力
- インターネットを介して情報を検索・探索し、その価値や信頼性を吟味し読むことのできる読解力
PISAでテストされる2つ目の読解力や3つ目の指す読解力は、日本での国語の読解力とは意味合いが異なります。PISAで検査される読解力とは、情報社会の中で生きていくために必要となる基本的な力になります。
PISA型読解力が求めている力とは?
PISA型読解力の内容を具体的に整理してみると、以下のような内容になります。
- 情報を正確に読み取る力
- 必要な情報を取り出し応用できる力
- 自分の考えを相手に伝わるように説明できる力
つまり、PISA2018で読解力が低下したとされたのには、以上の力が足りなかったということになります。
PISAでは、国際社会となった今、子供たちがグローバルな世界に進出した時に様々な課題に対して立ち向かう力が養われているがどうか判断しています。
日本の順位が下がったことで、国内での学習で完結することなく世界でも通用する読解力を実用することができるのか、という視点で受け止めざるを得ない状況になっているとも言えます。
日本の読解力が低下した原因とは?
日本のICT教育(パソコンやタブレット端末、インターネットなどを使った教育)は、実は諸外国に比べて遅れています。学校の授業での利用や、コンピューターでの宿題をする頻度がODCE加盟国の中で最下位だと言われています。
これだけ世の中に浸透していて、誰もが手にしているスマホやパソコンは、チャットやゲームのために使われていることが多いのも特徴です。
2015年からは、科学的リテラシーではパソコン用のテストを使用し始めました。2018年には、読解力の分野でパソコン用のテストがおこなわれるようになり、増々パソコンと学習は切り離せないものになってきています。
2018年の読解力の順位が低下した背景には、日本の学生がパソコンを使ったテストに慣れていないことが原因にあったのではないか、という声もあります。
これからの課題とは?
2018年のテストで、日本の生徒が比較的に正解率が低かった問題とは以下の2つになります。
- テキストから情報を探し出す問題
- テキストの質と信憑性を評価する問題
今の日本の段階ではICT教育が浸透していないことで、大量の情報から必要な情報だけを探す読解力が養われていないこと、また真偽を選び出す読解力が養われていないことが露になりました。
先述したように読解力の中には3つの相があって、日本の場合にはその中の3番目の読解力が弱いということがわかった結果となり、広義での意味では単に読解力が低下したとは言い難いのです。
今までも、教育者の間ではPISAの結果からどのように今後の教育に役立てるかを分析していて、文部科学省の「新学習指導要領」にも影響を与えるとも言われています。
実際に、コロナ禍ではICT教育に頼る部分も大きくなってきているため、これからどんどん浸透していくことでしょう。
まとめ
科学が進歩し人が生きる環境が変化するならば、体得するべき能力も常に変化させなければならない、という時代の流れを目の当たりにしているようです。
たくさんの情報が溢れているネットの世界で、どの情報を信じ選ぶのか。素直で信じやすい子供たちが間違った情報に流されないか、親としては不安になることもあります。
これからの情報社会で生きていくために必要な読解力を身につけるためにも、審美眼を養ってほしいと感じます。