夏になると、聞こえてくるのは蝉の声、
風鈴の音、夕立の音。
こめかみから伝う汗をハンカチで押さえ
ながら、暑さをさらにかき立てるのは
蝉の合唱です。
小学生の頃、夏休みに学校のプールに行く
時に通る神社のことを思い出すことが
あるんです。
参道の木立から無数に響く蝉の声に
耳がワンワンしたこと。
でも、あの頃に聞いた蝉の声と、今よく
聞く蝉の声って、違う気がします。
小学生の我が子に、ある日聞かれたのが
蝉の鳴き声と種類のこと。
童心に戻って、鳴き声の主が無性に
知りたくなったんです。
日本にいる身近な蝉の種類と鳴き声を
調べてみましたよ。
蝉が鳴く理由とは?
この世に生を受けて、ほとんどを土の中で
過ごす薄幸のイメージがある蝉。
7年間を幼虫のまま地中でじっと耐え、成虫に
なり、地上での寿命はわずか7日間、とよく
言われていますよね。
実は、成虫になり地上に出てから1ヶ月~
1ヶ月半ほどの寿命はあるんです。
それでも、地上での生活とは短いものです。
地上に出て、毎日毎日鳴き続けるのには
意味があるんですよ。
蝉の中で鳴くことができるのは、オスだけ
なんです。
オスは、限られた時間の中で、子孫を残す
ために大音量で鳴き、メスを呼びます。
というのも、メスが交尾できるのは一生に
一度だけなんです。
生きているうちにオスに巡り会えないと、
子孫を残すことができません。
オスは、「自分を見つけて!」と一生懸命
アピールして鳴き続けます。
その鳴き声は、蝉の種類によって違うんです。
日本にいる蝉は30種類ほどいる、と言われて
います。
どんな鳴き声を出すのか詳しく
見ていきましょうね。
蝉の種類と鳴き声
日本に生息する蝉のうち、身近にいて鳴き声を
よく耳にする蝉を紹介していきますね。
ニイニイゼミ
「チー・・ジー・・チー・・ジー・・・」
と繰り返し鳴きます。
単調な繰り返しの続く鳴き声が特徴的です。
成虫の体長は20~24mmで、背中に茶褐色の
w型の模様があるんですよ。
北海道~九州に生息し、平地の雑木林など
湿り気のある場所を好みます。
6月下旬の梅雨の真っ只中から鳴き始め、
9月には鳴き声もやがて聞こえなくなります。
他の蝉よりも早い時期に鳴き始めるのが
特徴ですよ。
ニイニイゼミの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
響いて引っ張るような鳴き声ですよね。
聞き方によっては、鈴が転がるような
音にも感じる時がありますね。
ミンミンゼミ
その名の通り、ミンミンと鳴きます。
「ミーンミンミンミンミンミー・・・」
との鳴き声を出す森林性の蝉です。
成虫の体長は33~36mmで、北海道~
九州に生息しています。
しかし、西日本の平地ではあまり見られ
ないのが特徴です。
蝉の中では、涼しい気候を好む傾向が
あるんですよ。
7月~9月上旬の日の出から正午まで
主に午前中に鳴くことが多いですよ。
ミンミンゼミの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
私が子供の頃に神社でよく聞いたのは、
この鳴き声です。
夏の授業中に、至近距離でミンミンゼミが
鳴き出し、みんなで爆笑したことを思い
出しました。
アブラゼミ
「ジリジリジリジリ・・・・」
という鳴き声を出します。
ジリジリの中にも抑揚があって、ビ・・・
と高音を出す時もあります。
まるで揚げ物をしている時の油が撥ねる
ような音に似ていることが、この名前の
由来になった、とも言われているんです。
成虫の体長は50~56mmで、背に白い
模様が入っているのが特徴です。
北海道~九州まで生息していて、特に
日本海沿岸地域や九州に多くいます。
午後、日が傾きかける頃~日が暮れる
頃まで鳴くため、「夜鳴き」することで
知られているんですよ。
7月~9月に活動することが多いのですが
たまに10月まで鳴き声が聞こえることも
あります。
アブラゼミの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
ジリッジリッ・・・と、暑さを倍増させる
鳴き声ですよね。
クマゼミ
「ジー・・・シャシャシャ・・・」
との鳴き声を出す大型の蝉です。
成虫の体長は60~70mmで、日本にいる蝉の
中でも、2番手に大きな種類のものです。
7月下旬~9月上旬の日の出から正午まで
活動しますよ。
南方系の蝉なので、西日本を中心に生息
していることが多いんです。
しかし、近年は温暖化の影響で、本来は
クマゼミがいない地域にも、生息しつつある
ようです。
クマゼミの鳴き声は、人間にしてみれば
独特の鳴き方のように感じます。
しかし、音のベースはミンミンゼミと
ほとんど同じなんです。
ゆっくり再生すればミンミンゼミに、早く
再生すればクマゼミになる、と言われる
ほど、そっくりなんです。
クマゼミとミンミンゼミは、お互いに
鳴き声で混乱しないよう、棲み分けして
いるとも言われています。
クマゼミの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
私の住む地域では、クマゼミは生息して
いないように思います。
今回、初めて聞く鳴き声です。
ツクツクボウシ
「ジー・・・ツクツクボーウシ」
と、独特の鳴き声を持つ蝉です。
日本列島に広く生息している蝉で
基本的には、薄暗い森林にいます。
成虫の体長は40~46㎜で、8月上旬~
9月下旬の午後の陽が傾いた頃~日没
後に活動します。
「ツクツクボーシ!」と1匹の蝉が鳴くと
他のツクツクボウシも呼応するように
「ジー・・・」と鳴き始めます。
合唱のように聞こえるのですが、一説には
妨害しているのでは、とも言われているん
ですよ。
ツクツクボウシの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
いつ聞いても、特徴的な鳴き声ですよね。
ヒグラシ
「キキキキ・・・」「カナカナカナ・・・」
という甲高い鳴き声です。
日本に広く生息する蝉で、オスとメスでは
個体の大きさが違います。
オスの成虫の体長は28~38㎜、メスは21~
25㎜になりますよ。
6月下旬の梅雨の真只中~9月中旬に
活動する蝉です。
陽の上る前、日が暮れる頃の、薄暗い時間に
鳴くことが多いんです。
物悲しさを感じさせる鳴き声は、夏の夕暮れ
を回想させる音の代表格ですよね。
ヒグラシの鳴き声は、下の動画で
確認してみて下さいね。
清涼感と哀愁のある鳴き声は、独特ですよね。
万葉集にもヒグラシを題材にした歌があり、
古来から親しまれている蝉なんですよ。
まとめ
住んでいる地域によって、蝉の鳴き声に
聞き覚えのないものもありますよね。
子供の頃によく聞いたミンミンゼミの
やかましいくらいの鳴き声が懐かしいです。
あまりの力強い鳴き声に、そんなに頑張ら
なくても・・・と思ったこともあります。
でも、蝉にしてみれば、必死に鳴いて
子孫を残そうとしているんですよね。
「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」
松尾芭蕉の有名な句ですよね。
この蝉がどんな鳴き声を持った蝉だったのか
議論になったこともあったとか。
この決着は、場所や時期から「ニイニイゼミ」
に落ち着いた、と言われています。
蝉と言っても、色々な種類がいるものですね。