後輩のBくんが内定をもらったといいます。
でも、浮かない顔です。
B「実は断わりたいんです。
でも、訴えられたりしないかと。」
私「それなら心配ないよ。
内定は、あくまで内定だから。
会社は引き止められないの。」
B「ほんとですか?」
私「よほど非常識なことをしたなら
話は別だけど、
まず訴えられるなんてことはないね。」
それに、内定といっても、
実は内々定なんじゃないの?
内定と内々定は
法的な意味が違うから、
内々定なら、なおさら問題はないよ。」
内定と内々定の違い
一般に企業が正式な内定を出すのは
10月1日以降とされています。
これは法律ではなく、日本経団連が定める
「採用選考に関する企業の倫理憲章」
に明記されています。
大半の企業は4月以降から
採用の意思を応募者に伝えます。
内定日が来る前に、学生に採用の
意思表示を伝えて囲い込むのです。
この10月1日以前に企業が応募者に
出す採用の意思表示が
「内々定」と呼ばれるものです。
これは、10月以降に正式に伝えられる
「内定」とは法的に違うものです。
内々定が伝えられた後、企業が内定日に
正式に内定通知書を交付します。
そして、学生が内定承諾書を出す、
というのが採用の流れです。
内定通知によって初めて
労働契約が成立します。
ですから、内々定には
法的拘束力はないのです。
さらに、内定についても、民法では
2週間の予告期間をおけば、
契約を解除できる、と定めています。
新卒者の場合、卒業後の4月1日が
就労開始日になります。
その2週間前までに内定辞退をすれば
法的な問題にはならないということです。
内々定にしても内定にしても
その法的位置づけに多少差があるものの
辞退できると考えていいものです。
ただ、内定段階まで進んでいれば、
企業は採用活動に多大な費用をかけており、
採用担当者の社内評価にもかかわってきます。
場合によっては、
感情的な対応を受けることもあり得ます。
法的責任とは別に、誠実な対応をして、
相手の理解を求めることは大切です。
内定辞退はまず電話連絡で
内定辞退を伝えるには、採用担当者に
電話で連絡をとります。
内定辞退の理由は、聞かれない場合は
答える必要はありません。
もし、聞かれたら正直に話します。
「他社からも内定をもらい、考えた末に
辞退させていただくことにしました。」
これで十分です。
内定辞退の電話連絡を入れると、
時には脅しに近いことを言われる
こともあるかもしれません。
しかし、何を言われようと、
毅然とした態度で内定辞退を伝えます。
理由を話す義務はありません。
就職活動の上で、内定辞退はどうしても
起きてしまうものであり、
法律違反ではありません。
言いにくいから、とずるずる遅くなれば
対応がさらに厳しくなります。
電話しにくいから、メールですませたい
という人もいるかもしれません。
しかし、内定辞退を電話でするのは、
一刻も早く内定辞退の意思を伝えるためです。
メールや手紙では連絡が遅くなり
行き違いで内定準備が進んでしまう
ことも考えられます。
さらに社会人として謝罪と感謝の言葉
を伝え、誠意をみせるためです。
・内定辞退の電話連絡例
私、●●大学の□□学部の××と申します。
人事部の○○様(担当者名)はいらっしゃいますでしょうか。
↓
私、●●大学□□学部の××と申します。
このたびは内定通知をいただきありがとうございます。
実は、たいへん申し訳ないのですが、
内定辞退させていただきたいと思いお電話いたしました。
↓
内定辞退の理由を質問されたら正直に答える
↓
本当に申し訳ありませんでした。それでは失礼いたします。
内定辞退の電話連絡の後にはお詫び状を送る
電話連絡の後にはそれで終わりとするのではなく、
お詫び状を送るのがマナーです。
・内定辞退後のお詫び状例文
株式会社□□
人事部長 ●● 様
拝啓、○○の候
貴社益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度は、貴社の採用内定をいただき、
誠にありがとうございました。
私にとって大変光栄なお話でしたが、
悩んだ結果、××という考えに至りました。
誠に勝手ながら、
今回の内定については辞退させて
いただきたいと考えております。
貴社の皆様には、
お時間を割いて選考をしていただいたにも関わらず、
期待にお応えする事ができず申し訳ありません。
誠に無礼とは存じますが、どうかご容赦くださいませ。
今後とも、貴社のご発展を、
心よりお祈り申し上げております。
敬具
署名
最後に
Bくんは、その後、無事内定辞退
することができました。
電話で話したときは、
穏やかな言葉をもらったといいます。
その後、お詫びの手紙も送りました。
誠実に話せば、通じるんですね、と
言っていました。