ハロウィンをひと月後に控えたある日、隣の奥さんが、苦笑いしながら「我が家のエピソード」を語ってくれました。
なんでも下の6つになる女の子が、去年、あの例のかぼちゃの置物を見て、怖くて泣き出してしまったんだとか。以来、かぼちゃを食べなくなってしまったんだそうです。
「パンプキンパイなら、食べるんだけどね。普通のお料理は食べないのよ。困ったなあ。そもそも、なんでかぼちゃなんか使うのかしらね?それもわざわざ、あんな怖い顔にして」
ううむ…そこは私も考えたことはありませんでした。そういうもんだと適当に納得していただけで。
なんだか気になったので、ちょっとその由来を調べてみることにしました。
ハロウィンの由来
ハロウィンの由来は、もともと古代ケルト人の原始宗教「ドルイド教」の、大晦日のお祭りだったそうです。ケルト人とは、イギリス北西部、アイルランドに居住していた先住民族です。
彼らにとっての新年は、現在の11月1日から始まります。その前夜、10月31日は、秋の収穫を祝うとともに、新しい年のために邪気を払う宗教行事が行われていました。
これが後世になるにつれ、宗教的な意味合いが薄れ、現在のハロウィンになったようです。
ちなみにハロウィンの語源は、諸説ありますが、カソリック系キリスト教の万聖節が11月1日だったため、歴史を経るうちにこれと習合し、万聖節の前夜「Hallow Eve」が訛って「Halloween」となったとされる説が有力のようです。
また古代ケルトでは、この10月31日は、亡くなった祖先の霊がこの世に帰ってきて、家族と一緒に新年を迎えると信じられていたそうです。ちょっと日本のお盆の風習に似てますね。
ただ祖先の霊とともに、邪悪な精霊も一緒にあの世からやってくるため、これを追い払うために、人々はわざと恐ろしい仮装をしたり、かがり火を焚いたりして、悪い霊を寄せ付けないようにしていたのだとか。
なるほど。それで仮装なんですね~。ハロウィンで飾られるかぼちゃが、ちょっと怖い顔にくりぬかれているのも、悪霊を追い払うためだったんですね。
もともとはカブだった?
さて、その問題のかぼちゃは、「ジャックオーランタン」と呼ばれています。悪魔のような顔にくりぬいて、中にろうそくをともす、いわゆるかぼちゃの提灯ですね。
しかし、もともとはこれ、カブを使っていたんだそうです。現にハロウィンの由来ともなった、イギリス北西部やアイルランドでは、現在もカブを使っているのだとか。
実はハロウィンが現在の形で広まったのは、アメリカにその風習が伝わってからと言われています。19世紀に急増したアイルランド系移民の人々が、その習慣を大陸に持ち込んだのです。
ただアイルランドと違って、アメリカではかぼちゃが多く生産されていたため、代用品としてカブの代わりに、これを用いるようになったのだそうです。
ちなみにハロウィンで使うオレンジ色のものは、あまり美味ではなく、食用には向かないそうです。それもあって、お祭りの用具として使いやすかったんでしょう。
余談ですが、このカブ、もしくはかぼちゃを使った提灯は、もともとアイルランド地方の伝説が由来となっています。「ジャックオーランタン」とは「提灯持ちのジャック」という意味なんですが、さてその伝説とは…。
- ジャックオーランタンの伝説
昔、ジャックという、嘘つきで行いの悪い男が、魂を奪いに来た悪魔をうまくだまして、永遠に自分から魂を奪わない、という約束をさせます。
が、いざ自分が死んだ時、現世の悪業が祟り天国へ入れてもらえず、仕方なく地獄へ行くと、くだんの悪魔が、魂を奪わないという約束をたてに、地獄へも入れてくれません。
行き場のなくなった哀れなジャックは、道に落ちていたカブをくりぬいて、そこにろうそくを灯し、あの世とこの世の間の真っ暗な道を、永遠にさまよい続けることになったのです。
ひええ…怖いお話ですね。このお話が、魂を奪おうとする悪魔を寄せ付けない、という迷信となって、ハロウィンの日にカブの提灯を作るようになったのだとか。
提灯を作り、さらにそれを怖い顔にくり抜くと、ダブル効果で悪霊が逃げていく、というわけですね。納得です。
おわりに
何も考えずに接していたジャックオーランタンも、こうやって調べてみると、歴史的な由来のある、奥の深いものだったんですねえ。
ちなみに、お隣の奥さんが、今年のハロウィンの顛末を教えてくれました。なんと、奥さん、今年はかぼちゃにドラエモンの顔を描いてみたんだそうです。そしたら、下の女の子は大喜びだったそうな。
そうですよね。お祭りだもの。みんなで楽しい気持ちになるのが、イチバン。仮装だって、今やみんな好き勝手やってますしね。お隣の奥さんの機転に、なんだかほっこりしてしまいました。