気付くと忙しく雑務に追われる毎日。
ベッドに入るときに一日を振り返ってみると、今日も特別なことなんてなにもないありきたりな一日だったような。
そんなときにちょっとアクセントになるのが小説を読むこと。。
映画を見る時間が無くても、通勤時間や休み時間にちょっと開いて日常から逃避行できるのが小説の良いところ。
涙を流すことはストレス解消になるとも言います。せっかくなので、感動の恋愛もので泣いてみるのも良いかもしれません。
いくつかおススメの小説をご紹介します。
『君の膵臓を食べたい』住野よる
ある日、病院で1冊の文庫本を拾った僕。
「共病文庫」というタイトルのその本は、実はクラスメイト・山内桜良が密かに綴っていた闘病日記。この本を読んだことで僕は、彼女が膵臓の病で余命いくばくもないことを知る。
秘密を共有する関係となった二人。桜良の「死ぬまでにやりたいこと」に付き合っていくうちに、それまで人と関わることに意味を感じていなかった主人公が変わっていく。
人は一人では生きていけない。関わることで得られるもの、失うもの、全く違うキャラクターの友人に惹かれる憧れの気持ち。思春期の揺れる心を思い出して切なくなってしまいました。
読みやすい文体で、一気に読める作品です。
『世界の中心で、愛をさけぶ』片山恭一
中学2年生の時に出会った朔太郎とアキ。落ち葉の匂いのファーストキス、無人島でのふたりきりの一夜、アキの発病、入院。アキは楽しみにしていたオーストラリアへの修学旅行も行くことができなかった。
日ごとに衰弱していくアキをただ見守るしかなかった朔太郎。アキの17歳の誕生日に、オーストラリアへ一緒に行こうと決意するがー。
朔太郎とアキの恋愛模様は、誰しも胸がキュンとしてしまう青春そのもの。最初に読んだ時よりも、年を重ねて改めて読んだときのほうが響きました。純愛だけでなく、人生観・死生観を絡めて感じることができたからかもしれません。
アキの死に向き合い続けて、自分なりの折り合いをつけていく朔太郎に、自分が大切な人を亡くしたときどうとらえるかを考えさせられました。
『僕は何度でも、きみに初めての恋をする。』冲田円
両親の不仲に悩む女子高生セイは、ある日、少年ハナに写真を撮られる。
優しく不思議な雰囲気のハナに惹かれて毎日のように会いに行くけれど、実はハナの記憶が1日だけしかもたないことを知る。それぞれが抱える痛みや苦しみを分かち合い心を通わせていくけれど、過酷な現実が待ち受けていて。
一日しか記憶がもたないけれど、毎日出会うたびにセイに惹かれるハナ。
悲しいようでいて、恋愛が始まる瞬間を何度も体験することは素敵なことなのかもしれません。
小さな喜びを感じられることの大切さ、人を支える、支えられることの大切さを考えさせられる作品。
小説としてはとてもやさしいので、文章としての読みごたえはないかもしれませんが、日ごろ本を読まない人にも楽しんでもらえる作品です。
『百瀬、こっちを向いて。』中田永一
表題作のほかに、三作が収録された短編集。
教室の中ではまるで目立たない自分を「人間レベル2」と表現する主人公のノボル。子どものころから兄のように慕う宮崎先輩には、学校一の美少女・神林先輩という彼女がいた。
けれど宮崎先輩にはもう一人の彼女・百瀬の存在があり、それを隠すためにノボルと百瀬が付き合っていると偽装してアリバイの片棒を担ぐことに。けれどノボルは百瀬をどんどん好きになる。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」
主人公のセリフに恋愛の持つ切なさが込められた、みずみずしい恋愛小説集。
軽い感じで読める小説かと思いきや、良い意味で裏切られる作品です。
「百瀬~」の作中に出てくる『刑事ジョンブック目撃者』は、30年以上前に観た個人的にとても懐かしい映画。住む世界の違う男女が惹かれ合う内容が作品ともリンクして、作者の憎い演出を感じました。
『カフーを待ちわびて』原田マハ
第1回日本ラブストーリー大賞を受賞した、原田マハのデビュー作。タイトルのカフーとは、沖縄の方言で「良い報せ」「幸せ」の意味。
沖縄の島で雑貨店を営みながら、愛犬・カフーとのんびりと暮らす主人公・友寄明青の元に、一通の手紙が届く。差出人に書かれた「幸」という名前には見覚えがない。
数か月前に明青が旅先の神社で「嫁に来ないか」と冗談交じりに書いた絵馬。手紙の主は「その言葉が本当なら私をお嫁さんにして下さい」と伝えてきたのだった。そして実際に「幸」と名乗る女性が明青のもとに現れる。やがて彼女が島を訪れた理由が明らかになる。
ゆったりとした沖縄の島の時間に抱かれて、楽しいことも悲しいことも、すべてが浄化されていくような物語。幸福を望むこと、そしてそれを待っているだけではなく積極的に求めることの大切さを教えてもらえるような作品です。
『いま、会いにゆきます』市川拓司
死んだ人間が行くというアーカイブ星。地球上の誰かが思ってくれている限り、その人は亡くなってもアーカイブ星で暮らし続けることができると言う。
最愛の妻・澪を亡くして1年、病気を抱えながら町の小さな司法書士事務所に勤める主人公・巧。6歳の息子と暮らす彼は、自分の死後、アーカイブ星で妻と再会するために、息子の佑司に二人の物語を小説に書き残そうとする。
そして妻が逝った雨の季節が再び訪れたある週末、町はずれの森で父子に奇跡が訪れる。
作者自身が体験した病気がベースになっていて、実際の生活で起こった出来事が散りばめられているとか。悲しい未来を知った後でも、精いっぱいの愛を伝える澪の姿に心打たれます。
『だれかのいとしいひと』角田光代
なんとなく不安定で仕事にも恋に不器用な男女を主人公にした8つ作品を集めた短編集。
転校生じゃないという理由でふられた女子高生、元カレのアパートに忍び込むフリーライター、親友の恋人とひそかにつきあう悪癖のある女の子、誕生日休暇を一人ハワイで過ごすハメになったOL。
何気ない日常の中にある切ない風景。情景が目に浮かぶように描かれて、登場人物の表情や心の機微まで感じられるような文章。8編それぞれがハッピーエンドではないけれど、主人公たちがその後をどんな風に生きていったんだろうと、想像させられる作品でした。
さいごに
いかがでしたか。
小説つに触れることで、非日常の世界を体験することができます。感情移入して涙することは、日ごろ心にたまった澱を吐き出させてくれます。
ステキな本に出会えるといいですね。